仮想通貨「ビットコイン」とは
昨年末あたりから少しずつ話題になっていた仮想通貨ですが、日本に本社のあった
業界最大手の取引所マウントゴックス(Mt.Gox)が今年の2月に経営破綻をしてビッ
トコイン(Bitcoin)が一気に注目を集めました。
日本ではあまり馴染みがなかったため、このニュースを耳にして「そんなものがあ
ったのか?」と感じた方がほとんどではないでしょうか。
貨幣という形の無い「仮想通貨」はいかにも胡散臭いというイメージがありますし
今回のような不正アクセス盗難による74万BTC(114億円相当)の消失と聞けば、今後
もますます手を出す気にならなくなってしまうかもしれません。
ただ、先行き不透明な仮想通貨ではありますが、いつかは私たちの生活に大きく関
わってくる可能性も秘めています。そこで今回のニュースはビットコインに焦点を当
ててみました。
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┃1┃ビットコインの概要
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ビットコインはその価値が大きく変動し、投機対象としてクローズアップされてし
まったのですが、もともとは「通貨」として機能しています。
通貨と言っても国家で管理している貨幣とは異なり、中央の組織が存在しません。
仮想通貨は他にも100以上の種類があり、各々特徴もありますがビットコインはその
うちの1種類です。
ビットコインでは世界中に存在する「取引記録を保持するコンピュータネットワー
ク群」が管理する形となっています。
このコンピュータネットワークは企業でも個人でも参加可能で、各々が部品として
動いています。
国家が介在していないため、海外との個人→個人取引であっても、手数料は原則的
に発生しません(後術する取引所を経由する場合は発生します)。このため「便利な
貨幣」として多くの人に注目され価値が上昇し、投機対象となっていった経緯があり
ます。
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┃2┃入手経路
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大きく分けて2つの方法があります。「購入」と「採掘」です。
①ビットコインの購入
ビットコインの取引所に口座を開き現金やクレジットカードで購入できます。
マウントゴックス社もこの業務を行っており、簡単な手続きで入手可能だったよ
うです。
②採掘(マイニング)
マイニング用のフリーソフトを実行することにより、自分でビットコインを得る
ことができます。ただしビットコインは貨幣価値を保つため世界中の全体量が制
限(最大2100万BTC)されていて、年々採掘作業は難しくなっています。
しかもソフトウェア同士が通信を行い、稼働するパソコンの数が多くなれば採掘
量を自動的に減らす仕掛けにもなっています。
そのため、現在では採掘できる量は、稼働させるパソコンの電気代にも満たず、
相当な高機能パソコンを用いても、割には合わなくなってしまいました。
実は先に述べたビットコインを維持する「取引記録を保持するコンピュータネッ
トワーク群」とは、このマイニングパソコンが役割を果たしています。
ビットコインネットワークを維持する報酬として、ビットコインを採掘・入手
できる権利があることになっています。
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┃3┃保存方法
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現実世界の貨幣と同じで、様々な保管形態があります。札入れをそのまま英訳した
ウォレットが一般用語です。
①デスクトップウォレット(マイウォレット)
専用ソフトを用いて自分のパソコン内に保管します。一番お手軽な方法なのです
が、電子データのためハードディスクがクラッシュすると、すべてを失うことに
なります。
②オンラインウォレット
銀行と同じ感覚で「取引所」に保管します。マウントゴックス社が盗難にあった
のは顧客から預かったビットコインでした。
通常は預かったビットコインをネットワークから切り離したパソコンに保管した
り、複数のパソコン分散するなどの方法でハッキングのリスクを回避します。
一部の指摘によると同社はこのあたりのリスク管理にも問題があったようです。
③ペーパーウォレット(コールドウォレット)
仮想通貨という性質からは意外ですが、秘密鍵を紙に印字して保管が可能です。
外部からのハッキングによる盗難の心配はありません。その反面、利用の際には
難しい暗号「秘密鍵」の手入力が必要となります。
このウォレット用ソフトウェアはビットコインの保管以外に、他者への取引申請も
行います。
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┃4┃ロジック
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中本哲史という人の論文がもとになり、2009年から運用が開始されました。
先に紹介した採掘ソフトを実行し複雑な計算式を解いて、ビットコインは生成され
ます。生成したビットコインのデータと所有者情報が暗号化され、世界中のビットコ
イン台帳(ブロックチェーン)に記録されていきます。
このブロックチェーンこそがビットコインの生命線となっており、発生から現在ま
での入出金履歴がすべて記録されています。
ブロックチェーンは世界中の人が自由に閲覧可能で、現在の総容量は9GBまで膨ら
んでいます。
また、ブロックチェーンは改竄(偽造)不可能な構造を持っています。
自分のパソコンが他のパソコン群と異なる主張をしても、多数決の原理で無視される
ように決められており、このことがビットコインの安全性を保障する仕掛けになって
います。
これらの考案されたソフトウェアはオープンソースの形をとっており、ブロックチ
ェーン同様、誰もが公平性を検証・確認できるようになっています。
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┃5┃リスク
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しかし仮想通貨は現実通貨と異なるリスクも合わせもちます。
仮想通貨は純粋な電子データのためハッキングによる盗難予防は必須です。
前述したいろいろなウォレットに分散保存する必要があるかもしれません。
また、ひどく稚拙な話ですが、ビットコイン(の秘密鍵)を印刷したQRコードを
テレビ番組で写したところ、たちまち盗難されたという事件もありました。
現実の通貨では考えられない事ですが、仮想通貨であるが故のリスクですね。
マウントゴックス社の盗難というのも、「盗まれた」というより所有権をはく奪さ
れた、というのが正確な表現なようです。(同社からデータは消えていないが、ネッ
トワークにあるブロックチェーンの所有者情報が書き換えられた)
また円やドル・金にも相場があるように、ビットコインも価値が上昇・下落を繰り
返しています。特に初期の価格急沸が伝説のようになり、一攫千金を目論む人が群が
る間は、このような状況が続きそうです。
このビットコインがこれからどのくらい生き延びるのかは予想もつきませんが、
国家の介在しない仮想通貨が、海外取引における「事実上の標準」になる日も遠くは
ないのかもしれません。
今回は今すぐのお金儲けには結びつきませんが、ちょっと将来を見据えて仮想通貨
の話題を取り上げてみました。