請求書等をスキャンニングしての電子化保存が認められるようになりました
皆様こんにちは。今月はゴールデンウィークがありましたが、皆さんはどのように
連休を過ごされましたか? 我が家は私も子供も飛び石連休だったので忙しい連休に
なりました。おまけにスピード違反で余計な出費までしてしまい、なんとも切ない連
休となってしまいました。
さてさて弊社からも何度かご案内させていただいた『個人情報保護に関する法律』
が先月から完全施行されました。皆様の会社におかれましてもこの法律に対する対策
がそろそろ一段落したのではないでしょうか?しかし、最初から完全な対策はなかな
か難しいので、今後も定期的に見直しや改善を行っていくことが必要となります。見
直しについても引き続きお気軽にご相談ください。
『個人情報保護に関する法律』の他に、実は4月1日にもうひとつ施行された法律
があります。『個人情報保護に関する法律』の対策等で世の中の注目がそちらに集中
していたこともあり、聞いたことがないという方もいらっしゃると思いますが、『民
間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律』という
法律です。
さすがにこの名称を聞いて「あ~あれね!」と思う方は少ないと思いますが、いわ
ゆる『電子文書法』や『e-文書法』などと呼ばれている法律です。年間約3,00
0億円かかっているといわれている〝民間事業者が帳簿書類を保存するコスト〟の軽
減が目的とされています。
この法律の施行により、「民間で取り扱う文書のうち一部を除いて文書の電子保存
が認められるようになります」と書いてしまうと誤解を招いてしまいますので簡単に
ご説明させていただきますと、1998年に施行された『電子計算機を使用して作成する
国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律』、略称では『電子帳簿保存法』
という法律では、
1.国税関係帳簿書類
国税関係帳簿及び国税関係書類をいいます。
2.自己が作成する帳簿書類
「自己が」作成するものでなければならないので、相手方から受け取る領
収書や請求書等は対象となりません。帳簿書類の作成のために電子計算機
(パソコンと思ってください)を使用するのは必ずしも保存義務者自身であ
る必要はなく、その従業員、委嘱契約等に基づく会計事務所・税理士事務所
等の職員に電子計算機を使用して作成してもらう場合もこれに該当します。
3.「最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する」帳簿及び
「一貫して電子計算機を使用して作成する」書類
記録を蓄積していく段階の始めから終わりまで電子計算機を使用して作成
する帳簿。また書類の作成の始めから終わりまで電子計算機を使用して作成
する書類ということを意味します。つまり記録過程において手書きを含まず
に作成するということで、手書きで作成した帳簿や手書きで作成して相手方
に交付する書類の控え等は対象となりません。
という上記1.2.3の条件を満たしている文書は電子化しての保存が認められてい
ました(認められるといっても勝手に行ってよいというわけではなく、税務署長等に
承認してもらう必要があります)。具体例としては、自己が電子計算機により作成す
る仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳などの帳簿や、貸借対照表、損益計算書等の決算関
係書類、また電子計算機により作成して相手に交付する領収書、請求書の控え等があ
げられます。
それが今回の『e-文書法』では、見積書や請求書など紙で保存されている文書を
スキャニングして電子化し保存することや、取引先等から受け取った手書きの文書を
スキャンニングして保存することが認められるようになりました。
新たに電子化して保存することが認められたのは、先ほどあげたものの他に、納品
書や注文書等の税務関係帳簿書類、カルテや処方箋等の医療関係書類、定款や株主総
会議事録等の会社関係書類等。原則的に民間の文書全ての電子保存を容認するという
ことになっています。しかし認められていないものもありますので確認は必要です。
一般の会社に馴染み深い国税関係書類を例にとってお話しいたしますと、帳簿や決
算関係書類、金額が3万円以上の契約書・領収書及びこれらの写しはスキャンニング
しての電子保存は認められていません。
この法律が施行されたからといっても、適当なスキャナーを持ってきてポコポコと
スキャンニングして電子保存していいかというとそうではありません。先の『電子帳
簿保存法』と同様まず税務署長の承認が必要になります。電子化したデータでの保存
に切替えを予定している日の3ヶ月前まで(施工後の平成17年4月1日から平成1
8年3月31日までの1年間は切替える日の5ヶ月前まで)に申請書を提出します。
詳しい手続き方法は国税庁のホームページをご参照ください。
Http://www.nta.go.jp/category/yousiki/houjin/annai/3030_01.htm
電子保存をするにあたり真実性と可視性を確保する必要もあります。真実性という
のは、文書原本を確実にきれいに電子化し、それが本物だという保証をするというこ
とです。スキャンニングした後の原紙は破棄してしまうので、スキャンデータを改竄
しても比較するものがありません。
改竄をどのように防ぐかというと、PKI(公開鍵基盤)と呼ばれる環境を利用し
た、電子署名やタイムスタンプと呼ばれる技術を利用して行います。スキャンニング
して電子化した文書に電子署名を付与して誰が作成した文書かを証明し、またその文
書が改竄されていないオリジナルの文書であるということを証明します。さらにタイ
ムスタンプを付与して、いつ作成された文書なのかを証明できるようにします。
可視性では電子化されたデータをいつでも見えるようしておくことが必要になりま
す。「電子化して保存してありますがすぐに出ません」というのは駄目なのです。デ
ータが要求されたときにディスプレイや印刷された紙の形ですぐに閲覧できるように
する必要があります。
国税庁を例にとりますと、「スキャナーの解像度はフルカラーで200dpi以上
の解像度」を要件としています。また出力についても、「映像面の最大径が35セン
チメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書
を備え付けること」という条件とともに、「拡大又は縮小して出力することが可能で
あり日本工業規格Z8305に規定する4ポイントの大きさの文字を認識することが
できること」といった具体的な要件が示されています。しかし、これらの要件は最近
の機器であれば問題なくクリアできると思います。
導入に当たり検討課題となるのが、必須となっている電子署名とタイムスタンプの
価格になってくると思います。電子署名やタイムスタンプの価格は現在1件当たり約
10円と言われています。ダンボール1箱を貸し倉庫等に保管する料金が月額50円
~100円程度ですので、文書の多い企業になると電子署名やタイムスタンプの単価
がもう少し下がらないとかえってコスト高になってしまう可能性があります。しかし
最近は定額制のサービスなども徐々に出てきており、コストは今後下がっていくと思
います。
もうひとつの課題は、電子署名やタイムスタンプの有効期限が、帳簿の保存義務期
間よりも短いという点です。法人税法や、所得税法では書類の保存期間が7年とされ
ていますが、現在の電子署名やタイムスタンプは3年から5年が一般的で、保存義務
期間中にもう一度振り直す必要があります。
このような課題から今すぐに運用するのは難しいかもしれませんが、この流れは今
後加速してどんどんサービスも向上し、価格もリーズナブルになっていく(もともと
の狙いが民間の帳簿書類の保存コストの軽減ですから)と思われます。今後の設備投
資やシステム構築の際には、『e-文書法』のことも念頭に置いてご検討してみては
如何でしょうか。〝何でもかんでも全部電子化〟をしても業務の効率化にはならない
と思われますので、一度弊社にご相談下さい。お待ちしております。
(Black Knight)